絨毯

ペルシャ絨毯一枚の世界の中には、かつて遊牧民族が思い描いた楽園のイメージが抽象化されているのです。 厳しい気候を生き抜く遊牧民にとって、水や樹々はオアシスそのもの。 ペルシャ絨毯の命である文様の多さには、ただただ驚かされます。 その中から家族の財産ともなり得る、たった一枚を探し出す喜びは大きなものと言えるでしょう。 それ故に、ペルシャ絨毯には、草やツルや花などの植物モチーフが多く見られるのですね。 けれども、文様は宗教的な精神のためや、単なる美しさのためだけに描かれたわけではないのです。 天上の美や永遠の生命に対する願いや意識が、常に彼らから離れませんでした。 それらの憧憬は絨毯という一枚の絵画に込められ、くつろぎの場として遊牧民とともにあったのです。 ペルシャ絨毯には、どこか神秘的な印象がありますが、イスラム教のモスク天井に彩られている模様を模したものが多々あるのも所以のひとつです。
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